「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によれば、30代の金融資産保有額は平均710万円です。
このうち、株式や投資信託に占める割合は3割程度です。
大切なお金を低金利の預貯金に眠らせておくのではなく、元手として積極的に運用する資産運用に注目されています。
投資はリスクがありますが、正しい知識で投資することで利回り3%以上の利益を得ることも可能です。
例えば、つみたてNISAのシミュレーションでは、毎月3万円を想定利回り3%で20年運用した場合、元本は720万円、運用収益は264.9万円です。
ただ預貯金に眠らせているだけでは資産はなかなか増えませんが、投資することで自分の資産を増やすことが可能です。
”投資”と聞くと100万円以上の大金が必要なのでは?と思う人もいますが、投資信託などであれば1万円以下、数百円程度から投資を始めることも可能です。
これから投資を始める人のために、投資の基本を優しく丁寧に解説します。
資産運用と種類
資産運用といっても、さまざまな種類があります。
それぞれの金融サービスによって、特徴や投資先、メリット・デメリットなどが異なります。
ここからは、代表的な資産運用を具体例や実際に実践している人の声などを紹介しながら、解説していきます。
預金
預金も資産運用の一つです。
貯蓄用の預金口座を開設している人も多いでしょう。
預金は当たり前の意識になっているかもしれませんが、資産運用の一つです。
口座にお金を預けているだけで始められるので、気軽に始められる資産運用の一つでもあります。
また、預金の中でも定期預金などであれば、普通預金に預けているよりも高い金利が付くことが多いです。
ただし、ゆうちょ銀行の場合、最大でも「0.002%」の金利にしか期待できません。
他の投資では、利回り10%以上のものもあり、それらに比べると大きなリターンには期待できません。
長期間預けたとして、数十円~数百円程度にしかならない場合も多いです。
預金は大きなリターンを狙うよりも、安定感を重視したい人に適している資産運用です。
メリット | デメリット |
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・口座があれば資産運用の準備は不要 ・元本が保証されている ・銀行による保証がある |
・大きなリターンには期待できない ・インフレに弱い |
「ここ10年以上、毎月定期預金にお金を預けています。金利は本当に微々たるもので、「投資」という分類には入るのかは分かりませんが、株式投資や不動産投資などと比べて大きく損をする可能性は低いので、預貯金での貯金を利用しています。少ないリターンではありますが、急にお金が必要になった時にすぐにお金を引き出せるという安心感もあります。ちなみに、現在200万円ほど定期預金に預け入れしていますが、数百円程度しか増えていません。(30代/男性)」
株式
株式投資は、資産運用の中でも最もポピュラーな投資方法です。
株式投資とは、企業が発行する株式を買い、株式の購入時と売却時の差額により生まれる利益を得る資産運用です。
投資の基本である、「安い時に買って高い時に売る」ことで利益を狙えます。
株価は企業の業績や金利動向、政治動向、投資家の売買動向など、さまざまな影響を受けて変動します。
企業の業績が良いと株価は上昇し、逆に企業の業績が悪化すると株価は下落する仕組みです。
例えば、株価100円の株を購入し、株価が200円の時に売却すれば100円の利益になるということです。
また、株式投資は株式を保有することによる配当金(インカムゲイン)ももらえます。
配当金とは、株式を保有している期間中、企業の利益を株主に還元するものです。
「1株〇〇円」という形で支払われ、保有している株数が多いと多くの配当金を受け取れます。
さらに、株式投資では企業が株主に対して株主優待を設けている場合も多いです。
株主優待とは、自社サービスの割引券や自社商品を提供するものです。
例えば、イオンモールの株を保有していると、優待としてギフトカード、カタログギフト、カーボンオフセットサービスなどが受け取れます。
100株以上の保有で3,000円相当、1,000株以上の保有で10,000円相当の優待を得られます。
「月曜から夜ふかし」というテレビ番組をきっかけに話題となっている桐谷さんは、複数の企業の株を保有しており、株主優待で生活している人気の投資家です。
株式投資には、他の投資にはないさまざまなメリットがあります。
メリット | デメリット |
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・配当金(インカムゲイン)がもらえる ・売買差益(キャピタルゲイン)が期待できる ・株主優待がある場合も |
・元本保証がない ・倒産するリスクもある ・投資金額が比較的高い |
「経済番組を見ていて、株式投資をしている人の割合が多く、私も気になって株式投資を始めてみました。最初は銘柄の選び方が分からず利益を出すのに苦戦していましたが、「こういう企業があるんだ、こういう企業が伸びているんだ」を知ることで、利益を得られただけでなく普段の生活の中でも視野が広がりました。(30代/男性)」
FX
FXは、Foreign Exchangeの略で、外国為替証拠金取引と呼ばれている投資です。
例えば、米ドルと日本円を交換するなど、2つの通貨を交換する取引です。
通貨を買ったり売ったりしたときに発生する差額分が利益になります。
1ドル=100円の為替レートで10万円を1,000ドルに交換したとします。
次に、1ドル=110円に為替相場が変動した時に保有しているドルを日本円に戻すと、1万円の差額分が生まれ、これが利益になるという仕組みです。
他の投資方法と同様に、為替レートが「安い時に買い、高い時に売る」ことで差額分の利益を得られます。
また、FXにはもう一つスワップ収益というものがあります。
スワップ収益とは、低金利の国の通貨を売って高金利の国の通貨を買うことで得られます。
例えば、金利10%のA国、金利1%のB国の2つの通貨ペアがあるとします。
金利1%のB国の通貨を売ってA国の通貨を買うと、金利差9%が収益となる仕組みです。
ただ高金利の通貨を保有しているだけでほぼ毎日スワップ収益が発生するので、初心者でも比較的利益を狙いやすいです。
メリット | デメリット |
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・少額から始められる ・取引可能な時間が長い ・上昇局面/下落局面の両方で利益を狙える |
・相場の急変動により大きな損失が出るリスクがある ・先読みが難しい |
「主に通勤中の電車の中で取引しています。仕事中は為替レートを見ることができないので、指値の逆指値は入れておいて、お昼休みに結果を見るのが楽しみです。PCに張り付く必要がなく、ちょっとした移動時間でも取引できるのが嬉しい。(30代/男性)」
債券
債券は、国や企業などの発行体が投資家から資金を借入するための有価証券です。
地方公共団体や民間企業が発行しており、債券保有期間による利子と、満期日を迎えることで受け取れる額面金額を受け取れる仕組みです。
債券投資で利益を上げるためには、「償還まで保有して、その間の利子を受け取る」または「証券価格が高い時に売却し、売却益を得る」ことで利益を狙えます。
また、債券価格が安い時に購入し、償還時に額面金額との差額を得ることも可能です。
国内債券なら、収益性も期待しつつ、安全性も期待できるのも魅力です。
債券には、主に個人向け国債や地方債、事業債、外貨建債券などの種類があります。
国が発行する国債なら安心感があり始めやすいですが、信用力の高い発行体であればあるほど、金利は低い傾向にあるのが特徴です。
メリット | デメリット |
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・銀行の定期預金よりも金利が高い ・売却益を得られる ・利益の計算が簡単 |
・途中売却すると元本割れを引き起こす可能性がある ・債券を売ることがでいない場合もある ・金利が上昇すると売却で損失が出やすい |
「外貨建て債券は為替リスクはあるけど、高利回りに期待できるのが魅力的。円高になった時には利金や償還金を外貨で受け取れるのがとても便利。円で受け取るタイミングを自分で決められるから嬉しい。(30代/男性)」
ETF
ETFは、取引所で株式と同じように取引できる投資信託です。
日系平均株価などの特定の指数の動きに連動するように運用されているのが特徴です。
日本語では上場投資信託といい、一般的な投資信託とは異なり、取引所に上場しているので証券会社を通して取引所で売買できます。
東京証券取引所には約300銘柄以上のETFが上場しています。
ETFは保有費用が安いので、長期投資にも最適です。
売買委託手数料の負担は軽く、手軽に投資できるようになりました。
また、普通の非上場の投資信託は1日1回その日の終値で基準価額が算出され、1日1回しか設定解約ができません。
しかし、ETFは取引所の取引館内であればいつでもETFの売買が可能です。
メリット | デメリット |
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・手軽に分散投資ができる ・値動きが分かりやすくコストが安い |
・分配金が自動的に再投資されない ・つみたてNISAの取り扱いが少ない |
「2021年ころからETF投資をしています。資金の余力がある時は定期的に買い増しをしています。購入総額は約10万円ほどですが、分配金は約8ドルほどもらえています。約10万円を預けて1,000円ほどの利益を得られた計算です。預貯金に預けるだけではこのように利益を出すことは出せないので、ETF投資を始めてよかったです。(30代/男性)」
先物取引
先物取引とは、ある商品を期日に取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引です。
現時点で売買の価格や数量を約束して、将来の約束日になった時点で売買をします。
事前に売買の価格を決めておくことで、価格変動リスクを回避できるのが一番の利点です。
証拠金は必要ですが、元本部分の資金は不要になるため、その分資金効率が良くなります。
担保となる証拠金を差し入れることで、少ない元本で大きな取引ができます。
メリット | デメリット |
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・「買い」と「売り」どちらでも取引ができる ・小額の資金から取引ができる ・短期間で利益を生み出すことができる |
・元本保証がされていない ・証拠金の追加が必要 |
「コミッションセールスを通じて取引しています。商品先物取引はハイリスクですから、投資のパートナーは時間をかけて探す必要があります。オンラインでの取引できるようになり、ネットで必要な海外の情報も気軽に入手でき、日本でも夜間取引ができるようになって便利になりましたね。(30代/男性)」
保険
保険での資産運用は、保険会社が行います。
そのため、自分で投資商品を選んで運用するのと比べて大きな運用成果には期待できませんが、万が一の保障を確保しながら将来の資産形成ができるのが特徴です。
例えば、保険期間が終身に渡り、被保険者が万が一死亡・もしくは高度障害状態になった場合、保険金受取人が保険金を受け取れる終身保険では、保険料払込期間終了後も解約返戻率が少しずつ増えていきます。
解約時期によっては、実際に払い込んだ払込保険料総額よりも多くの解約返戻金を受け取れる可能性があります。
実際に資産運用に向いている保険商品は、以下の通りです。
- 終身保険
- 低解約返戻金型終身保険
- こども保険(学資保険)
- 養老保険
- 個人年金保険
- 外貨建て保険
- 変額保険
メリット | デメリット |
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・ケガや病気、働けなくなってしまったときなど、もしもの際に安心がある ・保険料を払い込むことで満期保険金を準備できる ・生命保険料控除で節税できる |
・長期加入が必要 ・掛け捨てタイプの保険料よりも保険料が高い |
「資産運用の1つの手段として、保険を見直しました。もしもの時の備える保険の見直しだけでなく、資産運用の手段として保険を検討するのも1つの選択肢だと思います。保険相談では貯蓄や資産運用についての相談ができるのもメリットです。少ないリスクでもしものリスクに備えながら資産運用したい人には特におすすめです。(30代/男性)」
不動産投資
不動産投資では、家賃収入によるインカムゲインと売却によるキャピタルゲインが得られます。
不動産投資ではマンションやアパートなどの賃貸物件を購入するのが一般的です。
投資物件を購入する多くの場合、ローンを使って購入することになります。
一般的に不動産物件はかなり高額ですが、毎月の家賃収入をローンの返済に充てられるので、生活を圧迫することなく資産形成が可能です。
また、不動産投資を長年続けた後に、建物や土地を売却すれば売却益が得られます。
安く購入したものが必ず高く売却できるというわけではなく、景気に左右されるというデメリットはありますが、購入時に買い手が付きやすい物件を見極めることができれば、大きな利益に期待できます。
不動産投資は、月々1万円程度の支払いで3,000万円前後のマンションを経営することも可能です。
「不動産投資はお金がかかる」と思っている人は多いですが、実はローリスクで運用することが可能です。
メリット | デメリット |
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・ローンで不動産を購入できる ・家賃収入で購入できる ・相続対策や節税ができる |
・空室リスクがある ・老朽化のリスクがある ・金利が上昇するリスクがある |
「休日にふと立ち寄った本屋さんが不動産投資との出会いでした。以前から資産運用に興味はあったのですが、具体的に何かしていたわけではありませんでした。そんな時に偶然良い不動産投資会社に出会い、私に最適なマンション経営について詳しく説明してくれました。理想は、早期リタイヤで自分のやりたい事をやりたいと考えています。次の物件も増やしていきたいと思います。(30代/男性)」
税制優遇制度
「iDeCO(個人型確定拠出年金)」「企業型DC(企業型確定拠出年金)」「NISA(少額投資非課税制度)」などのさまざまな税制優遇制度が相次いで設置されています。
税制優遇制度は、投資で得た利益に対して税金がかからないというものです。
通常であれば、投資で得た利益には20%の税金が発生します。
これが免除され、利益が全て手元に残るということです。
税制優遇制度を賢く利用すれば、税制上のメリットを得られます。
- iDeCo
- 企業型DC
- NISA
- つみたてNISA
メリット | デメリット | |
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iDeCo | ・積み立てた掛金が全額所得控除 ・運用益が非課税 ・受け取り方法に関わらず、一定額が非課税 |
・運用状況によって資産が増減する ・原則60歳まで運用中の資産を引き出せない ・各種手数料がかかる |
企業型DC | ・掛金が非課税 ・運用益が非課税 ・各種控除で税軽減できる |
・資産運用のリスクを負う ・60歳まで引き出すことができない ・自分で運営管理機関を選ぶことができない |
NISA | ・配当金や分配金、譲渡益が非課税 ・確定申告が不要 ・金額の上限なくロールオーバーできる |
・1人1口座しか開設できない ・新規の投資が対象となる ・元本割れのリスクがある |
つみたてNISA | ・最長20年間の利益(運用益)と分配金が非課税 ・100円から少額投資できる ・いつでも引出し(換金)できる |
・元本割れのリスクがある ・限られた投資信託にしか投資できない ・損失が出たときに税制上のメリットを受けられない |
まとめ
資産運用とは、預貯金や株式、債券、不動産投資、投資信託などの金融サービスを利用して手持ちの資産を効率良く増やしていく方法です。
お金を預貯金に眠らせたままにしておくのではなく、将来の生活を守るために資産運用は必要です。
数年前に「老後2,000万円問題」が話題となりましたが、老後生活を年金だけで快適に過ごすことはできません。
老後について考えられない人もいると思いますが、将来的に後悔するリスクを削減するためにも、今の内から資産運用を始めておくことは非常に重要です。
この機会に、少額から始められる資産運用を始めてみてはいかがでしょうか。